内観を体験した非行少年との30年後の再会

内観者:非行少年
陽一さん(仮名)

最初の出会い

三十年前、大学院生だった私(三木善彦)は、内観法の心理学的研究のためA少年院に泊り込み内観の指導をしたことがありました。内観法は今でもあちこちの矯正施設で実施されていますが、ある刑務所の調査では内観を体験した出所者の再犯率は体験していない人の半分でした。内観によって周囲の人々の愛情を再確認し、自分が犯した罪に対する責任を自覚すれば、更生への意欲が向上するのです。

私がA少年院で内観の指導をした陽一君(仮名)は熱心に取り組み、育ててくれた祖父母などに対する感謝や謝罪の念が生まれ、彼が更生してくれるのではと期待しました。しかし、少年院を出てから一年半後、残念ながら再犯で刑務所に入りました。私は『内観療法入門』で、彼を失敗事例の一つとして報告しました。

30年後の再会

しかし、30年後に陽一君から「先生の本を読んで会いたくなりました」という連絡で再会しました。少年院を出てからの彼の人生は、その後も何度か刑務所に入るなど、波瀾に富んでいましたが、十数年前からきっぱりと犯罪の世界から訣別して、今では小さな会社の社長として立派に活躍しています。

再会後の彼からの手紙の一部を紹介しましょう。「先日はほんとうに心からなつかしい、そして楽しい時間を過ごさせていただきました。先生が私の心の中に内観という種をまかれましたが、なかなかうまく根づかず、発育不良のままでした。過去の私は殺人・強盗・婦女暴行以外、何でもやってきた罪人です。ただ私は30年前、私を育ててくれた祖父母への内観、そして当時つきあっていた女性への内観を、先生のご指導でさせていただいたお蔭で、お年寄り、女性、子供などをいじめたり、泣かせたり、犯罪に巻き込んだことは一度もありませんでした。私みたいに人一倍ワル知恵の働く、そして体力も頑強な人間がいかなる理由、状況を問わず巻き添えにしなかったのです。できなかったのです。

30年たった今、先生が私の心の中にまかれた種は生きています。実に強い種だと思い ます。やっと、最近少しずつ、土中に根を張ってきたような気がします。」

内観の種は陽一君の中で根を張るだけでなく、芽生え、花を咲かせ、実をならせています。経済や政治の激変の時代ですから、何らかの事情で彼の会社経営が危機にさらされることもあり、また波瀾があるかもしれませんが、たくましく復活する力を彼がもっていると信じます。

私たちは内観の効果がすぐに現れることを期待しますが、短期的には失 敗のように見えても、長期的には成功といってよい人たちもいるのではないでしょうか。
内観療法に限らず、どのような働きかけでも、たとえすぐに効果があがらなくても、成長 を長い目で見守ることが大切です。このことを陽一君の例は教えてくれています。

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家庭内暴力の男子中学生と母親

内観者:家庭内暴力の男子中学生
賢治さん(仮名) – 中学生

1.内観するまで

賢治さん(仮名、中学2年生)は1年ほど前からテレビのチャンネル争いなど些細なことに腹を立て、両親(とくに母親)を殴っていました。内観に来る前の晩も、アザのできるほど母親を殴り、自室のふすま4枚を粉々に壊したほどです。彼自信もコントロールできない攻撃衝動に苦しみ、内観をすすめられました。しかし、母親と一緒に研修することを拒否し、まずは彼一人で研修を始めました。母親は後に研修しました。

2.内観の様子

賢治さんは内観で「小さい頃、寝つくまでお母さんは絵本を読んだり、物語を聞かせてくれました。あるとき酔ったお父さんが何かで腹を立て、ガラスのコップを投げつけたとき、身をもってかばってくれました。これほど苦労し自分に愛情を注いでくれたお母さんなのに、お母さんの身になって考えるどころか、『うっとうしい人だ』という考えで文句ばかり言っていました」と語り、母親の苦労や愛情を忘れ、わがままを通し、母親を苦しませていた自分を、涙ながらに反省するようになりました。

また、父親に対しても同様な内観をした結果、「自分がやってきたことは、ほんとうに恐ろしいことで、非常識で、人間のやることではありませんでした。もうこれからは殴りません、というより殴れません」と語っています。

母親も内観した結果、夫婦げんかが絶えなかったことが息子の暴力の素地になっていたことに気づきます。そして夫婦げんかの種は夫だけではなくて、自分も蒔(ま)いていたことを自覚し、暴力をふるう息子ばかり非難して、自分を反省していなかったことに気づきました。

3.内観後の家庭

その後、夫婦仲は改善され、家庭の雰囲気は好転し、さらには家族や賢治さんをも苦しめていた暴力の嵐は影をひそめました。ときには口論になっても、暴力行為は一切なく、すぐ反省するようになったとそうです。
 内観によって賢治さんは両親の愛情を再体験し、父親像や母親像が好転し、暴力への正常な罪悪感が出現し、自己中心的な傾向が改善され、攻撃衝動をコントロールできるようになったのでしょう。

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