過食に悩む会社員

内観者:過食に悩む会社員
さち子さん(仮名) – 20代、会社員

内観するまで

過食症で悩む会社員のさち子さん(仮名・20歳代)が、奈良内観研修所に来られました。彼女は内観前のアンケートに、次のように記しています。
「急激なダイエットの結果、2年前から過食症になり、通院したり、カウンセリングを試みたのですが、ほとんど効果がありませんでした。自分で強い意志を持とうと何度も頑張ったのですが、どうしても夜になると甘いお菓子などを大量に食べてしまいます。どうしたらいいのか分からなくなっている時、カウンセリングの先生から内観研修のことを教わりました。過食を治すきっかけやヒントを得られたらと思い、受ける決心をしました」

さち子さんのように食事に関してこだわりが強くなり、他の身体的な病気がないにもかかわらず、普通の食事行動ができなくなり、拒食をしたり過食になったりする症状を摂食障害といいます。その背景にはストレスが想定され、患者が「自分は病気なのだ」という自覚が乏しく、その治療はなかなか困難で、身体に働きかける治療だけでなく、本人が摂食障害の背景にある心理的要因について理解を深めることが必要ですから、心理療法的なアプローチも大切です。

内観の様子

具体的事実に沿って回想していくと、多くの世話になったことが思い出され、して返したことが少なく、迷惑をかけたことが一杯浮かび上がってきます。さち子さんは母に対する小学校の頃の内観をして様々なことを思い出しました。例えば

・世話になったこと:
入学したとき机やランドセルを買ってもらったこと、授業参観や学年の行事にいつも来てもらったこと
・して返したこと:
お風呂で母の背中を流したこと
・迷惑をかけたこと:
迷子になって探してもらったことや、カゼにかかって長い間看病してもらったこと

このようにして、年代を区切って内観していくと、次々と記憶がよみがえってきました。さち子さんは内観後のアンケートに、次のように記しています。

「ここに来るまでは、とにかく過食症を治したいという藁(わら)にもすがる思いでしたから、自分のどこがいけないのだろうなどと考える余裕すらありませんでした。もちろん、過食症になったのは私のせいじゃないと思っていました。内観の始めのうちは、パッと思い出せるようなことしか思い浮かびませんでしたが、食事のときに流される内観体験者の録音テープを聞いたりしているうちに、思い出す範囲も広がっていき、母がこんなことを自分のためにしてくれていたんだなあと思うと涙が出てきました。

そして、ダイエットによって周囲の人に注目させ、とくに母の愛情がもっと欲しくなり、それが得られないと今度は食べ物に愛を求めたような気がします。母が病気の祖母の世話で必死だったのに、自分に愛情を注いでくれていないように思い込み、過食に走ったような気がします。
 ダイエットしたのも自分、過食で太ったのも自分だということを実感し、身勝手なことをして、気に入らないと母に当たり散らしていた私は、母や家族のありがたみに気づくことができませんでした。これでやっと親孝行をしようという意欲がわきました。人と同様、身体や食物にも迷惑をかけることなく、自分を大切にしていきたいです」

このように内観がうまく進展すると、自己理解や他者理解が深まり、病気の背景となった心理的要因が理解され、症状が解消したり軽減します。内観に成功した人は愛されていたことを実感して、人間への基本的信頼感を回復し、情緒的に安定します。また、自分の欠点を受け容れ、責任を自覚できるようになり、勉強や仕事への意欲も向上することが、いろいろな事例研究や追跡調査から明らかになっています。

そのため内観法は非行や不登校、あるいは家族の不和やうつ状態、あるいはアルコール依存症や心身症に対する心理療法のひとつとして評価されています。また、健康な人々にとっては自己啓発法となり、多くの人々によって活用されています。

内観後のさち子さん

さち子さんは、その後どうなったのでしょうか。2年8か月後の追跡調査に対して、彼女は摂食障害が治ったことを報告し、さらに次のように答えています。

「内観後、心の病気を克服できたのはもちろんですが、自分自身をよく見つめることができるようになったと思います。自分の悪いところを認めて、そんなところがあっても自分は自分なんだと思えるようになりました。それから何に対しても感謝の気持ちを持とうと努力するようになり、毎日何事もなく過ごせることがありがたいと思えます。人との出会いも新鮮で、自信をもって接することができるようになったと思います」

さち子さんは成功した事例ですが、それまでのカウンセリングで自己の内面に目を向けるようになり、内観法に取り組みやすかったからでしょう。一般に心理的な背景から生じる身体症状は本人の自覚が不足し、治療意欲が低くて、1週間研修所にこもって内観するという気にならないことが多いようです。

そのような時には、親や家族が共に内観すると本人への理解が深まり、本人も頑張って内観して、家族間によい相互作用が生じ、問題症状の好転をもたらすことがあります。

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